# ELCレイヤー ## 概要 ELCレイヤーは、マイコンのピンと各キーの端子がどう対応するかを提供する。 扱うのは配線だけとする。読んだ値をどう解釈するか(アナログ値から押下深さを出す変換、 キーごとのキャリブレーション)は持たない。キャリブレーションは実機ごとの実測値であって 設計データではなく、センサの品種はPCB設計ツール側の選択だからである。 ## 構造 ### ピンとピン提供者 ELCが扱う「ピン」は物理的なマイコンピンに限らない。**ピン提供者(provider)が提供する論理ピン**とする。 マルチプレクサ・シフトレジスタ・GPIOエキスパンダは、いずれも「少ないピンを多くのピンに増やす装置」である。 これらを提供者として扱うと、キーの側からは直結もmux経由も同じ「ピンに繋がっている」だけになる。 提供者は、自分が消費する上位ピンを宣言する。上位ピンには別の提供者の論理ピンを書けるので、 多段の接続は入れ子として表せる。分割キーボードの各半身は、それぞれ別の提供者として置く。 ピンの参照は `<提供者ID>.<ピン名>` の形とする。`VCC` と `GND` は電源レールを指す予約名で、提供者を持たない。 現時点で具体形を定めるのは、マイコンとアナログマルチプレクサの2種別。 デジタル側でピンを増やす部品も提供者として扱うが、種別ごとの記述は必要になった時点で定める。 ### キーの端子 キーは検出方式(detect)を持ち、検出方式ごとに端子の構成が決まる。各端子は接続先の論理ピンを持つ。 - 接点(contact): a, b の2端子。端子は無極性で、a と b に順序の意味はない - アナログ(analog): out 1端子。加えて電源の vcc, gnd。ホールセンサがこれにあたる 光学スイッチの端子構成は未定 [推測:P-1]。 ### 配線トポロジを区分として持たない マトリクス・direct・charlieplexing を列挙して選ばせることはしない。 これらは端子の接続先の組み合わせとして表れるものであって、設計者が選ぶ区分ではない。 - 両端子がそれぞれ別のマイコンピンを指す → マトリクスまたはcharlieplexing - 片方の端子が電源レールを指す → direct - out がマルチプレクサの論理ピンを指す → mux経由のアナログ読み row / col はELCの正本に含めない。charlieplexing で便宜的に行と列の形で書くことはあるが、 それは表記の都合であって配線の事実ではない。QMKなどが要求する row / col は、出力時に割り当てる派生情報とする。 ### ダイオード 接点キーはダイオードの向きを持つ。向きは端子名で表す(`a-to-b` はアノードがa側)。省略時はダイオードなし。 ### LEDの識別番号 LEDの番号はELCが持つ。設計者が恣意的に決めてよいが、決めた順序はそのまま配線の指示になるため、 配線の情報として扱う。 チェーンごとに、データピンと、LEDの並びを持つ。並びの各要素はPHYのノードIDで、 per-key LEDを載せたキーか、LEDの部品ノードを指す。並びの位置がそのLEDの番号になる。 チェーンは複数持てる。 現時点で定めるのはチェーン方式(WS2812系)のみとする。ドライバICでアドレスを与える方式は未定。 ### レイアウトバリアント PHYがレイアウトバリアントを持つ場合も、ELCは選択に関係なく全バリアントのキーを配線する。 基板上のフットプリントは選ばれなかった側も実在するため。 互いに排他なキーは、同じ接続先の組を共有してよい。排他でないキー同士が同じ接続先の組を持つのは 設計エラーとする。接点マトリクスなら、どちらが押されたかを区別できないため。 排他かどうかはPHYの木から判る。 LEDチェーンもバリアントごとに分けない。排他なキー位置の両方にLEDが載る基板も、 バリアント固有のキーにLEDが載らない基板もあるが、どちらもチェーンは1本で、選択によって並びが変わらない。 載らないキーは、PHYがキーごとに持つper-key LEDの有無でそのまま表せる。 ### 他レイヤーへの参照 キーとLEDの参照には、PHYのノードIDをそのまま使う。ELCはIDXを参照しない。 ### 持たないもの - センサの品種、出力特性、キャリブレーション値 - フットプリント、部品の実配置、基板の層構成 - キーの物理的な位置とサイズ(PHYが持つ) ## 保存形式 ```ts type PinRef = string // "<提供者ID>.<ピン名>" | "VCC" | "GND" type Provider = | { id: string, kind: "mcu", part: string, // 品番。ピン名の解釈に使う } | { id: string, kind: "analog-mux", channels: number, // 提供する論理ピン数。ピン名は "0".."channels-1" select: PinRef[], // 選択ピン。下位ビットから順 common: PinRef, // 共通ピン enable?: PinRef, } type KeyWiring = | { key: string, // PHYのキーID detect: "contact", terminals: { a: PinRef, b: PinRef }, // 無極性 diode?: "a-to-b" | "b-to-a", // 省略時はダイオードなし } | { key: string, detect: "analog", terminals: { out: PinRef, vcc: PinRef, gnd: PinRef }, } type LEDChain = { id: string, data: PinRef, order: string[] // PHYのノードID。並びの位置が番号になる } type ELC = { providers: Provider[], keys: KeyWiring[], ledChains?: LEDChain[] } ``` ## 検討済み・非採用 - `matrix.type` による配線方式の列挙 (journal/2026-09-20-elc-pin-provider.md) - キーが row / col を正本として持つ (journal/2026-09-20-elc-pin-provider.md) - センサの出力特性・キャリブレーション値をELCが持つ (journal/2026-09-20-elc-scope.md) ## 未確認事項 ### P-1 光学スイッチの端子構成 - 位置づけ: 本文「キーの端子」が扱えていない残り - 現状の認識: 発光側と受光側が独立した端子を持つのか、接点と同じ2端子として扱えるのかが分からない - 格上げ条件: 光学スイッチを使った実在のPCBの回路図を読み、端子数と配線の形を確認する ### P-2 複数マルチプレクサ構成の作り - 位置づけ: 本文「ピンとピン提供者」が前提にしている。`select` を提供者ごとに持たせてよいかに関わる - 現状の認識: 選択ピンを複数のmuxで共有して共通ピンだけ分ける形と、イネーブルピンで切り替える形が考えられるが、 どちらが一般的か確認していない。前者なら同じ `PinRef` が複数の提供者の `select` に現れる - 格上げ条件: 複数muxを使った実在のキーボードの配線を確認し、共有の形を確かめる ### P-3 駆動側と検出側の役割をELCが明示的に持つ必要があるか - 位置づけ: 本文「配線トポロジを区分として持たない」の残り - 現状の認識: 接点マトリクスではダイオードの向きから、directでは電源レールの参照から、 どちらを駆動しどちらを検出するかが決まりそうに見えるが、全方式で導出できるか確かめていない - 格上げ条件: 各方式について、端子の接続先とダイオードの向きだけから走査手順が一意に決まるかを確認する